マシニングセンタによる研削加工の事例と軸付きホイールの種類
従来、軸付きホイールを使った精密な研削加工には、治具研削盤が使われてきました。しかし近年、部品形状が複雑化するなか、より複雑な加工ができる研削仕様のマシニングセンタ(グライディングセンタ)のニーズが増えています。
このコラムでは、半導体製造装置における研削加工の課題と、マシニングセンタに搭載して使われる軸付きホイールについてご紹介します。
半導体製造装置における研削加工の課題
近年、EVや5G(次世代通信システム)向けを含む、半導体の世界的な需要の高まりによって増えているのが、半導体製造装置向けの部品加工です。とりわけ耐熱性や耐食性・耐摩耗性に優れ化学的に安定した「石英ガラス」や「機能性セラミックス」の加工ニーズが増加しています。
高い加工精度が求められる半導体製造装置部品は、その多くが研削加工で仕上げられています。しかし、部品形状の複雑化や、高機能材料などの難削材の増加にともない、これまでの研削盤では加工できないケースも増えており、複数の工作機械を経て仕上げることも少なくありません。
なかでも、前工程の装置部品の材料として多く使われている“石英ガラス”や“セラミックス”は、シリコンウエハーを乗せるためのポケット加工や、穴加工などの加工工程が多く、いかに加工効率を上げるかが課題となっています。
半導体製造装置市場について:
世界の主要半導体メーカーによる相次ぐ巨額の設備投資に牽引され、2021~2022年の半導体製造装置市場は活況し、世界全体の市場規模は2年連続で過去最高を更新した。…(中略)… 2024年以降は中長期的に拡大することが見込まれている。
研削仕様マシニングセンタ(グライディングセンタ)とは
研削加工の加工効率の向上に有効なのが、研削仕様のマシニングセンタ(グライディングセンタ)です。グライディングセンタは、ATCに研削用の「軸付きホイール」を搭載することができ、複数の研削工程を1台で行うことができます。
特に5軸マシニングセンタは、形状加工・平面加工・円筒加工などの複数工程をワンチャックで加工することができ、精度向上も期待できます。 これまで「平面研削盤」や「円筒研削盤」などで加工していた一部工程を、マシニングセンタで効率よく加工することが増えています。
◎研削仕様について
グライディングセンタは、摺動部やガイドなどの各軸を研削特有のスラッジ(粉状の切粉)から守るため、専用シーリングなどの防塵対策が施されています。通常のマシニングセンタで研削加工を行うと、機械の破損や寿命低下につながるため注意が必要です。
マシニングセンタに搭載される研削砥石とは
マシニングセンタによる研削加工に欠かせない工具が「軸付きホイール」です。軸付きホイールは、切削工具と同じようにシャンクで保持し、ATCに搭載されて使われます。
軸付きホイールでできる研削は、仕上げだけではありません。石英ガラスやセラミックスのような硬脆材料でも、ドリルやフライスのように「穴あけ」や「溝加工」を精度よく行うことができます。
また砥粒層すべてが切れ刃になっているため、エンドミルのように「底面」と「外周面」を同時に仕上げることもできます。
◎加工のポイント
- 一般的なフライス工具と比べ刃数が多いため、底面を使った加工には、接触面の小さいコアレスツールを使用します
軸付きホイールでできること
砥石による正面加工
「コアレスツール」や「カップ形状ホイール」を使うことで、正面加工ができます。
φ30〜φ50程度のカップ型軸付きホイールも製作でき、大きな面も効率よく研削することができます。
砥石によるポケット加工/キャビティ加工
「センタースルーツール」や「コアレスツール」を使うことで、ポケット加工/キャビティ加工ができます。
小さなポケット加工の場合、偏心穴付のセンタースルーツールを使うことで、ツール振り幅が小さくても残芯を残さず加工することができます。
砥石による穴面取り加工
先端にテーパー角度の付いた「メタル・電着軸付きホイール」を使うことで、面取り加工ができます。
逆R形状の電着軸付きホイールを使うことで、R面取り加工もできます。
砥石によるドリル加工
グライディングでの穴加工は、通常ヘリカル加工で行いますが、メタルボンドの「センタースルードリル」を使うことで、垂直方向の送りのみで下穴加工をすることができます。
ヘリカル加工にくらべ加工時間が短縮でき、効率的です。
砥石による穴加工
メタルボンドの「センタースルーツール」「コアレスツール」や、「小径電着軸付きホイール」を使うことで、ヘリカル加工による穴加工ができます。
砥石による溝加工
メタルボンドの「センタースルーツール」「コアレスツール」や、「小径電着軸付きホイール」を使うことで、ヘリカル加工やトロコイド加工による溝加工ができます。
(ランピング加工の様な一方向のみのツールパスの場合、切粉が加工点に溜まる傾向にあるため、ツールパスを工夫して切粉の排出を促すことをおすすめします)
砥石による肩削り加工(正面+外周)
スリット付の「汎用コンタリングツール」を使うことで、効率的な肩削り加工ができます。
砥石による外形コンタリング加工
斜めスリットを配した「メタルボンド軸付きホイール」を使うことで、外形コンタリング加工ができます。
軸付きのストレートホイールも製作でき、5軸加工機であればワークをC軸回転させることで、円筒研削することもできます。
軸付きホイール・軸付き砥石の種類
東京ダイヤモンド工具製作所では、複雑形状の加工やさまざまなs高硬度材・脆性材に対応する、マシニングセンタ向けの「軸付きホイール」を幅広くラインナップしています。
穴あけ加工用軸付きホイール(センタースルー)
ドリル加工用のメタルボンドセンタスルードリルです。ヘリカル加工なしで、軸方向の送りのみでドリル加工ができます。
(ツールが消耗するため、穴径を一定精度に仕上げるリーマ加工には不向きです)
ヘリカル加工用軸付きホイール(センタースルー)
汎用的に使うことができる、偏心穴付のメタルボンド小径ツール(センタースルー構造)です。
切粉の排出がでないため、突込み加工による穴あけはできません。また、外周側を使用したコンタリング加工には使用しないでください。
(平面加工用途でφ4以上の場合は、コアレスツールをご使用ください)
ヘリカル加工用軸付きホイール(コアレス)
周速0点をなくした、コアレス構造の汎用メタルボンドツールです。
センタースルー構造も可能ですが、小径では軸剛性が低くなります。また、φ8以上はスリット入りが可能です。
(コア抜き“トレパニング加工”用途の場合は、コアツール・コアビットをご使用ください)
コンタリング加工用軸付きホイール
ツール外周側を主に使用する、メタルボンドコンタリングツールです。斜めスリット入り形状が標準となります。スリット傾斜はスピンドル正(右)回転でご使用を想定しており、センタースルー構造も可能です。
先端面までスリットが入っているため、肩削り加工でも効率的に使用することができます。
マシニングセンタによる研削加工の事例
マシニングセンタと軸付きホイールを使った、サンプルワーク(コロッセオを模した複雑形状)の加工例をご紹介します。
加工例では粗加工〜仕上げまで、硬く脆い石英ガラスをワンチャッキングで加工しています。
◎加工のポイント
- 硬脆材料は、特にヌケ側でカケが出やすく注意が必要です
- サンプルワークでは、ツールパスを工夫することで、硬く脆い石英ガラスを薄く研削し仕上げています
マシニングセンタによる研削加工の事例まとめ
東京ダイヤモンド工具製作所では、半導体製造装置向け石英ガラスの研削をはじめ、SiCセラミックス・AlN窒化アルミニウム・窒化ケイ素・アルミナセラミックス・シリコンなど、ワーク種類や形状にあわせて、最適な軸付きホイールをご提案します。評価用マシニングセンタ(グライディングセンタ)にて、社内評価も可能です。
マシニングセンタ/グライディングセンタでの脆性材料加工ツールの選定でお困りでしたら、ぜひ一度東京ダイヤモンド工具製作所までお問い合わせください。