ダイヤモンドホイールとは?ダイヤモンドホイールのお役立ち基礎知識
ダイヤモンドホイールはダイヤモンドの粒を切れ刃にした研削砥石です。SG、WA、GCなどの一般砥粒を使用した砥石と区別する意味で超砥粒ホイールと呼ばれ、ダイヤモンド砥粒を使用した砥石はダイヤモンドホイールと呼ばれます。 硬いダイヤモンドを切れ刃にしているため、近年増加しているシリコン・SiCなどの半導体材料や機能性セラミックスなどで使用されることが増えています。
本コラムでは、「ダイヤモンドホイールとは」と題して、ダイヤモンドホイールの基礎と使用上の注意点やコツなど初歩的な内容をまとめました。
若手エンジニアの方や、工具を取り扱う若手営業の方にもおすすめの記事です。
ダイヤモンドとは
ダイヤモンドは、地球上で最も硬い物質です。一般的には宝飾用としてのイメージが強いですが、その硬さを利用して工具材料としても広く使用されています。
ダイヤモンドの化学組成は炭素です。ダイヤモンド構造という組織構造をとっており、硬い特性を有しています。
ダイヤモンドの特性
- 硬い:非常に硬い材料
- 熱伝導率が高い:放熱性が高く、工作物・加工点の温度上昇を軽減する。
- 高温には弱い:600℃から700℃程度で酸化
- 鉄と相性が悪い:鉄と反応して摩耗が進展するため一部を除き鉄系材料の加工にはCBNを使用する。
ダイヤモンド:
ダイヤモンド(英: diamond [ˈdaɪəmənd])は、炭素のみからなる鉱物。炭素の同素体の一種でもある。モース硬度は10であり、鉱物中で最大の値を示す。一般的に無色透明で美しい光沢をもつ。ダイヤとも略される。和名は「金剛石(こんごうせき)」引用元: Wikipedia
「ダイヤモンドホイール」と「CBNホイール」との使い分け
ダイヤモンドホイールはダイヤモンドの粒を切れ刃にした研削砥石です。ダイヤモンドの“地球上で最も硬い”特性を生かして、一般砥石などでは研削が難しい・効率が悪い「硬質材料」の研削に使用されます。
そんなダイヤモンドホイールですが熱に比較的弱く鉄を研削すると化学的に摩耗が進行する性質があり鉄系材料の加工には向いていません。ダイヤモンドが苦手な鉄系材料の研削で使用されるのがCBNホイールになります。CBN(立方晶窒化ホウ素、cubic Bron Nitride)は比較的熱に強く鉄系材料の加工での高効率な加工に向いています。
◎CBNホイールの詳細は、「CBNホイールの種類と特徴」で紹介しています
ダイヤモンドホイールと一般砥石との違いは?
切れ刃になっている粒(砥粒)の違いで呼び方が違っています。
ダイヤモンドやCBNの砥粒を使用した研削砥石は「超砥粒ホイール」と呼ばれ、SiCやアルミナ系砥粒などを使用した一般砥石と区別するためホイールと呼ばれています。
外観上では、ダイヤモンド・CBNホイールは台金(ベース)と呼ばれる金属の基板にダイヤモンド・CBNの砥石層(砥粒層)が接合されていますが、一般砥石の多くは砥石層のみで形成されています。
ダイヤモンドホイールでの研削加工について
研削加工とは固定砥粒(砥粒を各種ボンドで固定した砥石・ホイール)を用いた除去加工を指します。
バイト・ドリル・エンドミルなどの刃物を用いた切削加工とは違い、ダイヤモンドホイールでの研削加工ではダイヤモンドの粒が切れ刃になります。
そのためダイヤモンドホイールは、鈍角でランダムに配置された多数の切れ刃をもった回転工具になります。砥粒を含む一定の層(砥粒層)があるため、表面のダイヤが摩耗しても新たなダイヤモンドの粒が露出して継続して使用できます。
研削加工の特徴
- 硬い工作物の加工に向く(切れ刃が多く、切れ刃が鈍角)
- 工具寿命が長い(切れ刃が多い)
- 加工物の面粗さを上げるのに向く(ランダムに多数の切れ刃)
- 精度の高い加工に向く(微小な砥粒が切れ刃)
◎研削加工については、「研削工具の参考情報」でも紹介しています
ダイヤモンドホイールを構成する要素
ダイヤモンドホイールは砥粒・結合剤・気孔の3要素から構成されています。さらに3要素のうち砥粒と結合剤は5要因に分けられます。
ダイヤモンドホイールの構成要素
ダイヤモンドホイール
- ①砥粒(切れ刃)
- Ⅰ種類(砥粒の種類)
- Ⅱ組織(砥粒の体積率)
- Ⅲ粒度(砥粒の大きさ)
- ②結合剤(切れ刃の保持)
- Ⅳ種別(結合剤の種類)
- Ⅴ結合度(結合剤の硬さ)
- ③気孔(切りくずの排出、冷却)
ダイヤモンドホイールの一般的名称
ダイヤモンドホイールは、ダイヤモンド砥粒を含んだ砥粒層が台金(ベース)に接合されて形成されています。台金には、アルミ合金や鉄などが使用されています。
また使用用途別に、主に外周を使用する「ストレートホイール」、主に端面を使用する「カップホイール」、軸の先端に砥粒層をもつ「軸付きホイール」などの製品名称があります。
ダイヤモンドホイールの種類
ダイヤモンドホイールは、ホイールを構成する3要素の結合剤(ボンド)の種類で大まかに分類されます。
各ボンドの主な特徴や使い分けは下記になります。
◎各ボンド種類の解説は、「研削工具の参考情報」で紹介しています
ダイヤモンドレジンボンドホイール
ダイヤモンドレジンボンドホイールは、樹脂を結合剤(ボンド)に使用したホイールです。表示記号は「B」。
- 適度な弾性があるため良好な面粗さが得られる。
- ボンドが目替わりしやすく切れ味が持続する。
- 樹脂ボンドのため耐熱性は高くなく、他ボンドと比べて寿命が短い。
- 汎用性が高く幅広い用途で使用される。
ダイヤモンドメタルボンドホイール
ダイヤモンドメタルボンドホイールは、金属を結合剤(ボンド)に使用したホイールです。表示記号は「M」。
- ボンドの耐摩耗性と砥粒保持力が高く、長寿命
- 熱電合率が高く放熱性がよく、研削時の砥粒の熱的劣化を低減
- 弾性がなく、砥粒が加工物(ワーク)に喰いつく。反面、表面粗さは悪くなる。
- 硬脆性材料(硬くもろい材料)の加工では、細かな切粉により適度にボンドが摩耗して目替わりを促し、切れ味の持続性がある。
ダイヤモンドビトリファイドボンドホイール
ダイヤモンドビトリファイドボンドホイールは、ガラス質の結合剤(ボンド)を使用した陶磁器(セラミックス)質のホイールです。表示記号は「V」。
- 良好な切れ味を発揮する。
- 切れ味と寿命、研削持続性のバランスがいい。
- ホイールに脆さ(もろさ)があるため、使用用途が限られる。扱いが難しい。
- 脆さからツルーイング(成形)がしやすく、ホイールの総形成形なども可能。
- 熱伝導率が悪く熱がこもりやすいが、他ボンドと比較して容易に有気孔を形成できるため切粉の排出を促し冷却効果を得ることができる。
ダイヤモンド電着ホイール
砥粒を金属台金(ベース)にメッキ固定した表面に一層だけダイヤモンド層が形成されたホイールです。表示記号は「P」。
- 砥粒の保持力が最も高く、他ボンドと比べて砥粒の突き出しが大きく、切れ味が良好。
- 砥粒の喰いつきがよい反面、加工物の表面粗さは悪い。
- 複雑な総形形状なども台金形状に依存するため容易に製作できる。
- メッキを剥がして再度砥粒を固着する、再電着(再生)が可能。
- ダイヤモンド層が一層だけのため寿命が短い。
それぞれの用途によって向き不向きがあります。また特性を合わせた複合ボンドや特殊ボンドなどもあります。
ダイヤモンドホイールの仕様表示
SDC | 200 | N | 100 | BDH | 3.0 |
---|---|---|---|---|---|
砥粒の種類 | 粒度 | 結合度 | 集中度 | ボンドの種類 | 砥粒層の厚み(mm) |
ホイールには構成する5要因が一般的には刻印されています。この5要因は「ホイール仕様」と呼ばれます。(メーカーや製品によっては表示がない場合もあります)
ホイール仕様表示はJIS規定で一定の規定がされていますが、メーカー各社のノウハウ要素が多く含まれているため、各社で独自に仕様表示を定めているケースが多くあります。
例えば、レジンボンドのボンド種類記号はJISでは“B”という表示が定められていますが、ボンド種類が多々ありメーカー独自のボンド名を表示したりしています。 リンク の”BDH”などです。
仕様の選択には経験則も必要になります。加工したいワーク材質・形状・要求品質・加工方法から弊社にて選択しますので、お気軽にお問い合わせください。
ダイヤモンドホイールの用途
ダイヤモンドホイールは様々な分野で使用されており、多くの用途があります。
半導体材料の加工
半導体関連部材の加工
- パッケージ基板の切断
- サポートガラスの面取り加工
半導体製造装置部品の加工
自動車部品の加工
各種自動車部品の加工
- ブレーキパッドの加工
- インパネ周りのタッチパネル用ガラスの面取り加工
- エンジン回りのセラミックス部品の加工
- CFRP・GFRPの切断
工具の加工
切削工具の加工
- 超硬ドリル・エンドミルなどの切削工具の加工
- PCD・PcBN切削工具の加工
- 超硬合金丸棒の切断
精密機器の加工
モーター材料・センサー部材の加工
- フェライト・サマリウムコバルトなどの磁性材料の加工
- ガラスレンズ金型の加工
ダイヤモンドホイールを使用する際の注意点、コツ
ダイヤモンドホイールを使用する際の注意点やコツについて詳しい内容は「ダイヤモンド工具のお役立ち情報」から資料を無料ダウンロードできます。
資料ではコラムよりさらに詳しい情報と下記の内容についても説明しています。